和歌山県 那智勝浦港
生まぐろの水揚げ高日本一を誇る港
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20年ぶりに那智勝浦港へ
私がまだ魚屋に入ったばかりの20年程前に行った以来の和歌山県和歌山県那智勝浦港
初めて訪れた時、自分的にはかなりの衝撃でしたが、今回もその衝撃度は相変わらずでした。
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魚屋から六次産業化プランナーとなった現在は前職の魚屋バイヤー時代にも増し全国各地の港へお伺いする様になりましたが、この港だけは特別です。
何が違うのか?
この港に水揚げされるのは ”延縄船” の船だけなのです。
それではその延縄漁って?
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この延縄を数百kmもの長さで流して行きますが、そこにたった5匹程度が
掛かると大漁と言われるとても非効率な漁法で捕獲する全国各地の船が入港する
全国的にも非常に珍しい漁港です。
こうした漁法である為、水揚げされる魚の大部分はマグロですが、
このマグロだけでも季節により釣れる種類は様々です。
もっとも多いマグロはびんちょうマグロでこれは多く捕れる為
活きたまま上がってきた物に関しては、活〆作業を施し冷海水の船倉へ
それ以外のキハダマグロ、メバチマグロ、本マグロ、カジキマグロなどは
活〆までは同じですが、これらの魚種に関しては船上でえら、内臓も処理し
冷海水の船倉へ入れて行くそうです。
そのほかにもカツオやサメ、あまり知られていませんがアカマンボウなども
水揚げされます。
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水玉模様がかわいい魚で、アカマンボウという名前から水族館で人気の
マンボウと同じように思われる方も多いと思いますが、
種類も全く別物です。
身の質はマカジキに近いオレンジ色の身です。
こんな那智勝浦港で130年近くマグロと向き合ってきた企業へお伺い致しました。
株式会社 ヤマサ脇口水産
この会社は産地仲買だけではなく、元々 廻船問屋を行っていたそうです。
廻船問屋って??
まぐろはえ縄漁船はかなりの期間漁に出て、帰港するのですが
水揚げ地は勝浦だけでなく千葉県銚子や沖縄などにも水揚げするのですが
一つの漁港に水揚げが集中すると浜相場は下がり、その逆もあります。
それらの情報を漁師さんに伝えコントロールし、少しでも漁師さんが儲かる様に
指示したり、帰港後の宿泊の手配などを行うのが廻船問屋の主な仕事なんだそうです。
しかし、産地仲買の仕事は水揚げされたマグロを安く仕入れ高く売る事が利益の源なわけで、漁師さんは少しでも高く売りたいと相反関係にある訳です。
このヤマサ脇口水産はこの両面の仕事をするという稀有な存在なのだそうです。
脇口社長に色々なお話をお伺い致しました。
![株式会社ヤマサ脇口水産社長
脇口 光太郎氏](https://flatfield.online/wp-content/uploads/2019/10/DSC2027-683x1024.jpg)
今まで全国様々な所へお伺いし多くの方々のお話をお伺いしましたが今までお会いした方々とは見ている所が違うな~というのが私の感想でした。
その一つが来年から食品加工に義務付けされるHACCPの認定を受けておられる事。しかもFDA方式HACCPというアメリカにも輸出可能な最も難しいと言われる認定です。
これは現在大手企業に出荷する際に安全性の担保を問われるハードルです。大手グループの工場では取得している所はありますが、中小民間企業で取得している所はとても稀です。
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また、自社で ”もちまぐろ” という商標登録を所有されているこれもなかなか珍しい事です。
そして最後に私が最も驚いたのが ”MSC” 認定の取得を目指し既に前段階の ”FIP”を取得されているという事でした。
”MSC”って???という方がほとんどだと思いますが・・・
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現在、世界では自然環境に配慮し持続可能社会の実現というのが現在の先進国のスタンダードとなりつつあり、特に欧米諸国は消費者の意識も高くこれらの考え方に背く企業や商品は消費者に支持されにくい状況です。残念ながら日本ではまだまだではありますが、2020年のオリンピックで提供する食品に関してもこれらの食品でなければ提供出来ません。オーガニック農産物などは耳にした事はあると思いますが、平たく言えばこれの漁業版の様な認定資格です。
この認定を取得するためには多くの時間、労力、費用が必要となる為日本で取得している、目指している所はほとんど皆無です。
そんな中、脇口社長はそれを目指されている、なぜか???
このままでは、地球上のマグロ資源が枯渇してしまうという危機感
ここ数年年始の築地市場、豊洲市場では多くのメディアが
殺到しているので皆さんご存知ですね!
そう、マグロの初セリです。今年は一匹3億円を突破しましたね!
これにはもちろんご祝儀相場やお店の広告など様々な要素もあっての価格であるのですが・・・
クロマグロは ”黒いダイヤ”と呼ばれています。しかし・・・このマグロが絶滅の危機に瀕しており、世界的に漁獲量の規制が行われている事はニュースなどでも知っている方も多いと思います。
でも、この原因を知っている方は少ないのが現実です。
なぜ?絶滅危惧種になってしまったのでしょうか?
現在、クロマグロの多くは養殖、畜養が主流です。
これは日本だけでなく世界的な流れです。
最近、近畿大学が ”完全養殖” に成功し ”近大まぐろ”が有名になっていますが、これは簡単に言うとマグロの卵を孵化させ出荷出来る大きさにまで成長させるというのが ”完全養殖”です。
しかし、これはまだまだごく一部で殆どは稚魚を捕獲もしくは産卵期の脂乗りの良くない時期に捕獲したマグロに餌を与え太らせる ”畜養” と呼ばれる方法で育てています。
問題はこの稚魚や脂乗りの悪いマグロはどこから??という事です。
この稚魚を集める為での目的ではないのですが、初夏の日本海で ”巻き網漁によるマグロの乱獲” が行われています。
初夏の日本海を産卵の為小型のクロマグロは群れになって南からし毎年、北上して行くのですが、それを高性能のソナーなどで群れを発見し、文字通り一網打尽にしてしまいます。
この時期のクロマグロは脂乗りも悪く、一網打尽に捕獲してしまうため”身焼け”と呼ばれる現象も起き品質は良くないのが現実です。
しかし、大量に取れる為価格は非常に安価である為大手量販店などの特売商品として大量に売りさばかれいます。
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同じ本マグロがかたや1kg1万円以上が叩き売りになりそれでも売り切れて、食べてもらえるなら良いですが売れ残り廃棄される!?
本当にこれで良いのだろうか?
このままでは一般消費者がたべられなくなってしまう!
脇口社長は代々まぐろに関わり、まぐろで生活させてもらってきたからこそ
このまま手をこまねいているわけにはいかない!と立ち上がったそうです。
私も魚を販売させて頂いた事で生活させていただきました。また、現在は色々な生産現場で小規模生産者の方々の不遇を目の当たりにして、現状を変えて行かなければと感じております!