ブランド魚を考える

香川県のオリーブハマチってご存知でしょうか?

もう10年以上も前になりますが、私が百貨店の魚屋に居た頃の話です。

香川県がハマチ養殖発祥の地でその記念事業として研究されたのが、

このオリーブハマチなんです。

私も当時は全く知りませんでしたが、香川県の県魚はハマチ、県木はオリーブという事でこれをミックスした事が出来ないか?という事でスタートしたそうです。

それを研究したのが香川大学でいわゆる産官学連携事業というやつですね!

色々と研究した結果、オリーブの葉にはとても多くのポリフェノールが含まれており、このポリフェノールの効果でブリ、ハマチの課題である血合いの変色を防げるのでは?という事になり、テストを繰り返したそうです。

その結果、餌に配合する量や与える期間を色々試し飼育方法が決定したそうです。

しかし、血合いの変色を防ぐのには一定の効果が見られたのですが、オリーブの葉には動物性たんぱく質が含まれておらず、成長を抑制してしまうという反作用も出た様で、そのバランスを決めるのはかなり苦労されたそうです。

そして、晴れて商標登録を出願しいよいよ販売スタートという時に私がいた会社に販促イベントの依頼が来たのです。

元社長は香川県漁連さんとはとても深い関係で、イベントの依頼に来られた時も県職員、漁連関係者、生産組合の方々と大勢が来られました。

そして、元社長からひと言「おお、加藤、テレビでも呼んでど~んと売ったれ!」と安易なお言葉です。

その後、元社長は「まあ任しとけ、加藤にやらせとくから、さあ寿司でも食いにいこか?」と丸投げのむっちゃぶりです。

その後、百貨店広報の方にご協力頂きなんとかNEWS番組の密着取材の候補となったのですが、メディアの方に説明したところ「うん~ちょっと弱いですね!、バラエティー性か社会性の要素ってないですか?との事・・・

色々と考えた結果この様な流れですすめさせて頂く事になりました。

香川県は瀬戸内海で漁場の小さく魚の捕れる量が少ない、そのためいち早く育てる漁業に取り組んだ。それがハマチ養殖で日本初であった。

それから80年全国でハマチ、ブリの養殖が行われる様になり、差別化が出来なくなってきた。そこで研究開発し再度養殖のトップランナーとなるため研究開発したのが、このオリーブハマチで餌には小豆島のお茶に使用するオリーブの葉を贅沢に使用している。この茶葉は無農薬栽培で育てているというこだわりです。

これを説明させて頂きなんとか取材が決定し、いざ取材へ!

オリーブ園、茶葉加工工場、養殖場、婦人会に方々の料理紹介などを撮影し放送され、おかげで大好評で売れ行きも好調で事なきを得ました。

その後、全国でこのポリフェノールの効果を使ったご当地ブリ、フルーツ魚などと呼ばれる魚が次々と登場しました。ミカン、梅、スダチ、ゆず、しょうが、チョコレート、かぼすなど上げればきりがないほどに・・・

しかし、当時の私の感覚ではこれではお客様に支持されないと思っておりました。なぜか?血合いの変色を抑えて得をするのは売り手の都合だからです。

血合いの色が悪ければお客様は買わなければいいだけなのです。お客様は少しでも新鮮でおいしくて、安全なものを求めているだけです。

これがお客様の心境なのですが、売り手側はそこに気が付かないから、血合いの色が変わりにくいという所に行ってしまっている様に感じました。

それは、へたをすると古くても古く見えないから、損をしないという風に感じてしまうのは、私だけでしょうか?

その後、オリーブハマチの売り上げは年々増加し生産組合さんはかなり儲かって行ったそうです。するとここで大きな問題が発生です。

生産量を増やしすぎたため、肝心のオリーブの葉が足りなくなったのです。生産量を減らせば済む簡単な事なのですが、やはり人はいったん手にしたお金は離したくないのが人情です。その結果外国からオリーブの葉を輸入し国産と混ぜて飼料に混ぜて使っています。

現在は、「小豆島のオリーブの葉を使用」とは謳っていないので法律的にはなんの問題もありませんが、元々のコンセプトから大きく脱線してしまった様に感じるのは私だけではないはずです。

ブランドを名乗るのは簡単ですが、そのブランドを守る事は本当に難しいのだと思います。そのブランドを崩さない努力がシャネルやビトンの価値なんだろと思います。

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